サポート紹介&利用者の声

SUPPORT 2025.05.28

~「多様性が豊かさとなる未来」のために~
NPO法人青少年自立援助センター YSCグローバル・スクール

子ども・若者たちが輝けるためには、ここが安心できる場所であること、仲間がいること、私たちが信頼できる大人であること、がとても大切だと考えています。

1年通ったら各自が希望する進路に進めるような日本語力と学力を身につけることを目指しているので、授業はとても密度が濃いですよ。

海外から日本に来た方は、言葉がわからないことで、個性や能力を発揮できない状態に陥りがちです。私たちはそういう方たちが次の一歩を踏み出す支援をしていきたいと考えています。

NPO法人青少年自立援助センター YSCグローバル・スクール 統括コーディネーター  ピッチフォード 理絵さん

YSCグローバル・スクールって?

困難を抱える子ども・若者の自立を支援するNPO法人 青少年自立援助センター(YSC)が担う支援事業のうち、「外国にルーツを持つ子どもと若者のための支援事業」を行っている部門です。

リーマンショックによる景気後退を背景に、定住外国人などの子どもたちの就学をサポートする「定住外国人の子どもの就学支援事業」を国から受託する形で、東京都福生市で2010年4月に子どもたちの受け入れをはじめました。

国の事業としては2014年度で終了したものの、支援へのニーズは依然として高かったことから、団体の自主事業として子ども・若者へのサポートを継続しています。ま た、コロナ禍以降は対象を生活者(成人)にも広げています。

福生市の教室での対面授業に加えて、オンラインで受講できるクラスもあり、自治体や学校等とも連携して全国各地に学びの場を届けています。

どんな人たちが学んでいますか?

6歳から高校進学を目指す若者、そして生活者(成人)まで、スクール通学とオンラインの授業をあわせて年間約400人が学んでいます。国ごとに義務教育の年数が異なることや、高校卒業資格があっても、日本の高校を卒業したいというニーズも高いので、受講者の年齢には幅があります。

2010年当初は、フィリピンとペルーにルーツを持つ子どもたちを中心に10人程度でスタートしましたが、すぐに口コミで広まり、年度末には約60人に急増しました。

近隣のエリアには中国、フィリピン、ペルーなどにルーツを持つ子ども・若者が多いです。2011年以降はネパール出身の方々の来日が増え、現在はネパールにルーツを持つ子ども・若者も多くなっています。

また、年々出身地の多様化も進んでいると感じます。いまはアジアや日系の方が多い南米だけでなく、ウクライナやアフリカなど、約40の国と地域にルーツを持つ子ども・若者・生活者(成人)が学んでいます。

どんな支援を心がけていますか?

子ども・若者たちが輝けるためには、ここが安心できる場所であること、仲間がいること、私たちが信頼できる大人であること、がとても大切だと考えています。子どもや若者たちはお互いに授業でわからない内容を教え合って仲良くなっていきますが、我々支援者も仲間づくり・友だちづくりを後押しするようにしています。

たとえば、高校進学を目指すクラスではいま、生徒たちの間で休み時間にけん玉をすることが流行っています。元々は当スクールのスタッフが呼びかけたもので、日本語のレベルに関係なく生徒たちに楽しんでもらう目的で始めました。さらに日々の授業だけでなく、スポーツ大会や遠足などのイベントを企画して交流を深められるような機会をつくっています。

授業のカリキュラムは、できるだけ早く日本の学校に安心して通えるように、あるいは短期間で高校に合格できるように組んでいます。チャイムで授業時間をくぎり、クラスみんなで教室の掃除をする時間を設けるなど、日本の学校とほぼ同じ仕組みを導入して日本の学校でも戸惑わないようにしています。

授業を担う皆さんはどんな方々ですか

当スクールで日本語の授業を担う先生方は、全員が日本語教師の資格を持っています。これはスクールが求める応募要件でもあります。また、基本的に集団授業になるので、教科担当の先生方は元教員や学習塾などで教えた経験があるスタッフが多いですね。

オンラインの授業を担う先生は、出勤を前提としないので、全国各地でそれぞれの場から授業をしています。

地元で毎年夏に開かれる 「福生七夕まつり 」に出す市民模擬店の準備や、遠足などのイベントについては、若い先生やスタッフたちが中心になって企画してくれています。スクール一丸となってやるのですが、毎回非常にやりがいがありますよ。とっても大変ですけどね。

高校進学希望者向けプログラムの内容は?

日本語のレベルがそれぞれ異なるので、まずは本人と保護者への面談やガイダンスなど、情報提供と、相手の状況を知ることから始めます。

日本語が全くわからない状態の子どもたちの場合、まずは「初級日本語」のクラスを約3か月間学びます。「レベル1」のクラスからスタートして、「レベル2」「レベル3」と進み、そこから「教科学習」へとステップアップし、最終的にはそれぞれの希望の進路に進むことができるように支援しています。

授業は一コマ50分で、昼休みには教室で持参したお弁当などを食べるなど、クラス単位で活動します。最初は言葉の壁があっても、スクールで一緒に学ぶうちに次第に協力しあって、生徒同士で仲良くなっていきます。

生徒たちの母国の教育制度や家庭の事情はさまざまで、出身地だけでなく年齢も異なります。1年通ったら各自が希望する進路に進めるような日本語力と学力を身につけることを目指しているので、授業はとても密度が濃いですよ。当スクールのスタッフたちは授業以外でも、外国人の受け入れ枠のある都立高校などと情報交換をしながらサポートしています。

若者・生活者の定着・就労支援プログラムについても教えて下さい

若者・生活者を対象とした日本社会への定着や就労を支援するプログラムは完全オンラインで実施しています。自宅で受けられるので、家事や仕事をしながら受講する人もいます。また、カリキュラムも日本語の授業は午前中に、午後は生活に役立つ表現や漢字を学ぶなど、子どもたちとは異なる内容になっています。

20代・30代くらいの若い女性が、小さい子どもを抱えながら学ぶケースも少なくありません。また、子どもが小学生向けのクラスに通い、お母さんも日本語をうまく話せないので生活者の定着・就労支援プログラムを受ける、というケースもありますよ。

一定の日本語を習得した後は、日本語能力試験(JLPT)を目指す人、就労に向けて履歴書や面接の準備を進める人、漢字など生活に必要な内容を集中的に学びたい人など、それぞれの目的にあわせたきめ細かい支援を用意しています。

学校とも緊密に連携

YSCグローバル・スクールでは、多文化コーディネーターが学校や保護者、行政機関など外部との連絡や調整を担っています。私自身はまず、保護者との良好な関係を築くようにしています。たとえば保護者とSNSでつながっておくことで、学校の教師と保護者が連絡が取りづらいという場合に、間に入って調整したり、コミュニケーションをサポートしたりすることもあります。

東京都の高校進学希望者向けプログラムの場合、YSCグローバル・スクールを含む8つの支援団体で「日本語を母語としない親子のための高校進学ガイダンス実行委員会」を構成していて、保護者に対する情報提供の機会も設けています。

また、私自身も複数の都立高校の学校運営協議会に入れて頂いていて、学校との情報共有も重要な役割です。先生方を対象に外国出身の生徒や保護者との接し方について研修をする機会を頂いたり、高校の全校生徒向けの人権講話や講演をさせて頂くこともあります。

団体の利用者の声

YSCグローバル・スクールの卒業生で、現在都立高校2年の男子生徒に話を聞きました。

2023年にネパールから来日しました。日本語が全く話せず、日本の高校で学びたかったので、YSCグローバル・スクールの「高校進学希望者向けプログラム」を受けました。スクールの授業は、知らない漢字や言葉がたくさん出てきて難しかったです。でも日本語やいろいろなことを学べて、友だちもできて楽しかったです。いまは高校に進学して新しい友だちもできました。将来は大学でビジネススキルを学んで日本で働きたいと思っています。

この記事を読んでいる方へ

海外から日本に来た方は、言葉がわからないことで、個性や能力を発揮できない状態に陥りがちです。私たちはそういう方たちが次の一歩を踏み出す支援をしていきたいと考えています。友だちや知り合いを通じてでも良いので、まずは相談をお待ちしています。

また、「国内で自立して生活するために支援が必要な方をサポートする」という青少年自立援助センターのコンセプトは、事業部を超えて共通です。海外ルーツの方がひきこもり状態にある、または障害があるなど、どこに相談すれば良いのかわからない、という場合にも各事業部と連携しながら支援ができるのも当団体の強みです。ぜひ気軽にお声がけください。

YSCグローバル・スクールHP

https://www.kodomo-nihongo.com/index.html

NPO法人青少年自立援助センターHP

https://www.npo-ysc.jp/